今年の就活/傾向と対策

文系より就職に有利という通説は本当か?

一般的に理工系は就職に有利といわれています。文系と比較して絶対数が少なく、技術立国の根幹を担う技術職は採用数全体が抑制されても削減されにくいため、蓋然的には間違ってはいません。文系就職をする人も少なくなく、「つぶしがきく」学部でもあります。ただし、産業構造と市場が変化するにつれ、企業の求める人材も変化し、理工系といえども安泰とはいえない時代になりました。

技術職に求められる能力とは何か?

技術職をめざす学生の中には、「人付き合いが苦手だから」とか「好きな研究に集中したいから」という理由で適職と思っている人がいるかもしれません。自分のスキルアップになるかどうかばかりを考えて企業選びをし、社会や世間の動向に関心をもたない人もいます。しかし、企業は生産活動によって社会に付加価値を生み出すことで、はじめて対価として利益が得られるのであり、企業で活動する以上、独善的な開発・設計というものはありえないのです。また、高度な技術があればそれだけで良い製品が生み出せるわけではなく、常に営業部門やマーケティング部門、企画部門などと連携しなくてはなりません。クライアント企業へ同行し、プレゼンテーションをする機会もあります。さらに技術部門の中でも、プロジェクトチームを組むことが多く、的確な状況把握とコミュニケーションが求められます。


こうした理由から、企業が理工系学生に求める能力は、表1にあるとおり「専門知識」や「基礎学力」は当然として、それよりはるかに大きなウエイトが「コミュニケーション能力」に置かれています。表1 企業が求める能力表2は、経済産業省が実施した「企業の『求める人材像』調査」から研究・開発系職種に関する部分を抜粋したものです。
求める社会人基礎力は、研究・開発職種であっても全職種平均とほぼ同じ能力が求められ、「チームで働く力」も重視されています。若手に不足が見られる社会人基礎力としては、「考え抜く力」や「前に踏み出す力」と比較して「チームで働く力」は「求める社会人基礎力」より割合が小さくなっていますが、逆にいえば企業に就職できている人はすでに「チームで働く力」が備わっている人ともいえます。

図1 求める人材像 求める基礎力 図1 求める人材像 不足が見られる基礎力

純粋な技術開発だけであれば論理的な思考に慣れている理工系の学生のほうが就職に有利でしょう。しかしいま見てきたように、技術者にはコミュニケーション、チームワーク、人間関係を円滑に進める能力が必要なのです。これは一般的には文系の分野でしょう。技術者というと理工系の職種と思われがちですが、実は図2にあるとおり、文系出身者も多く職に就いています。特に雇用が縮小している時代にあっても採用意欲が旺盛なIT業界においては、新卒技術者の4割近くを文系出身者が占めています。それでも半数には達していませんから、やはり理工系の多い職種ではありますが、分野によってはもはや文系・理系の区別以上に他の選考基準で採用が決められているといってもよいでしょう。

図2 出身学部別割合

グローバル競争時代の脅威

2010年6月、パナソニックが新卒採用の8割を外国人にするとの方針を示し、衝撃がはしりました。大坪文雄社長が雑誌のインタビューに答えたもので、2011年度は外国人の割合を増やし、新卒採用1390人のうち「グローバル採用枠」を1,100人とし、残る290人についても日本人だけを採るわけではないという内容でした。2011年1月20日には、ソニーが2013年春に入社する国内新卒採用数のうち3割を外国人とする計画を発表しました。それまでも中国とインドの大学から採用してきましたが、理工系を中心にインドネシア、ベトナムの学生も採用を始めるというもので、2011年卒の14%から倍増することになりますが、海外拠点ではなく国内採用であることが大きな特徴でした。
新卒採用全体が縮小している一方で、外国人採用枠が拡大し、日本人学生の門戸はますます狭まっていきます。理工系採用の多いメーカーやIT企業は、生き残りにグローバル競争が避けられない時代となり、国籍を問わず優秀な学生を確保する傾向は今後さらに広まっていくでしょう。理工系学生のみなさんは、国内だけではなくグローバルなレベルで実力を競い、就職戦線を戦っていかなくてはなりません。